①エネルギー機器は「何を・どの深さで・どう温めるか」の3つで決まる
②同じ「たるみ機器」でも脂肪への影響が正反対=ここが選択の分岐点
③浅い=質感/深い=支持構造。両方要るなら別々の機器か多層機
④新しい=優れている、ではない(HIFUとRFは効果同等のRCTあり)
⑤院内機器の比較試験はほぼ存在しない=適応で選ぶ
院内には多数の機器があるが、①エネルギーの種類 ②届く深さ ③脂肪をどうするかの3軸に置くと迷わなくなる。
顔面皮膚の断層構造:表皮 → 真皮 → 皮下脂肪(小葉と線維隔壁)→ SMAS(白い筋膜シート) → 深部脂肪 → 表情筋 → 骨。どの機器がどの層に届くかが、適応の分かれ目になる。
図:SAI作図(gpt-imageによるオリジナル生成・教科書図の複製ではありません)
| 層(深さの目安) | そこに届く院内機器 | 何が起きるか |
|---|---|---|
| 表皮〜浅真皮 0.5〜1mm | ハイドラ/各種ピーリング/プラズマシャワー/LDM/オリジオKiss(Tモード) | 角質・キメ・毛穴・トーン=質感の領域 |
| 真皮 1〜3mm | ポテンツァ/エリシスセンス(針RF 0.5〜3.5mm)/オリジオKiss(G・Xモード)/★オールタイト(中真皮〜) | コラーゲン新生・ハリ・ニキビ跡=肌質と支持力 |
| 皮下脂肪 3〜12mm | ★オンダプロ(約80%が脂肪層/顔用Pocket 3mm)/ダーマシャイン(水光・浅層) | 脂肪が減る=痩身。こけている部位に当ててはいけない層 |
| SMAS・筋膜 4.5mm〜 | ウルトラセルZi(HIFU 4.5mm)/オリジオKiss(HIFU部)/★オールタイト(浅層SMAS) | 支持構造の収縮=引き上げ。ここに届かないとリフトにならない |
| 骨膜上 | (機器ではなく)ヒアルロン酸の深部注入 | 土台そのものを作り直す(→Q20上級編) |
💡 この図から言えること
・浅い層=質感/深い層=支持構造。「肌がきれいになる」と「引き上がる」は別の層の話で、片方だけでは主訴が解決しないことが多い
・SMASに届かない機器でリフトは語れない(=表層だけの機器を"たるみ治療"として売らない)
・皮下脂肪の層に何をするかが、最大の分岐点——オンダは減らす、オールタイトは温存、HIFUは当たれば減る。痩せ型にどれを当てるかで結果が正反対になる
・オールタイトが「脂肪を挟んで真皮とSMASの両方に効く」のは、水分の多い層だけが選択的に温まるという原理による(次項)
| エネルギー | 加熱の原理 | 特徴 | 院内機器 |
|---|---|---|---|
| モノポーラRF | 組織抵抗によるジュール熱(インピーダンス依存) | 表皮〜真皮浅層に温度ピークが来やすい。面で広く温まる | オリジオKiss |
| 誘電加熱(DLTD) | 水分の誘電双極子振動で体積的に発熱(40.68MHz) | 水分の多い組織(真皮・SMAS)が選択的に温まる/水分の少ない脂肪は温まりにくい | オールタイト |
| マイクロ波 | 2.45GHzで水分子を振動(Coolwaves) | 約80%のエネルギーが皮下脂肪層に到達=脂肪を狙い撃ち。RFではない | オンダプロ |
| HIFU(超音波) | 超音波を1点に集束=熱凝固点(TCP)を作る | 65〜70℃の点状凝固。SMASをピンポイントで収縮。脂肪層に当たれば脂肪も減る | ウルトラセルZi/オリジオKissのHIFU部 |
| 針RF | 絶縁針の先端からRF=表皮を介さず狙った深さに直接 | 表皮の熱損傷を抑えつつ真皮に高エネルギー。薬剤導入も可 | ポテンツァ/エリシスセンス |
一言でいうと
オリジオKiss=守備範囲が広い万能機/オールタイト=脂肪を減らさずに引き上げる専門機。
同じ「たるみ機器」の棚に置くと混乱するので、別の軸に置いて考える。
| オールタイト | オリジオKiss | |
|---|---|---|
| 方式 | DLTD誘電加熱(40.68MHz超高周波) | モノポーラRF(ジュール加熱)+HIFU |
| 加熱の原理 | 水分依存の体積加熱。FocusPolar収束電界 | 組織抵抗依存。表皮〜真皮浅層にピークが来やすい |
| ターゲット層 | 中真皮〜線維中隔(FSN)〜浅層SMAS | 表皮〜皮下(RF 0.5-4mm・T/G/X 3モード)+SMAS(HIFU 4.5mm) |
| 温度 | 約45℃の低温。凝固点は作らない | HIFU部は65〜70℃の熱凝固点 |
| 脂肪への影響 | 脂肪のエネルギー吸収は真皮の約1/17=温存。臨床研究で脂肪萎縮の報告ゼロ | HIFU部は脂肪層も熱変性しうる(痩せ型は頬こけ注意) |
| 痛み | VAS 0.4/10(ほぼ無痛・麻酔不要) | 冷却2.25倍+振動で「じんわり温かい」程度(麻酔不要) |
| 細かい部位 | 面で温める | 小型チップで目元・人中・口周りも可(RFは神経を避けずに照射できる) |
| 持続 | 1回で2〜3ヶ月/月1×3回で6ヶ月〜1年 | 3〜6ヶ月(3〜6ヶ月ごと推奨) |
💡 なぜ「脂肪を温存できる」のか(機序)
従来のRFは組織抵抗(インピーダンス)で発熱するため、電流経路にある組織が広く温まる。一方DLTDは誘電率と水分含有量に依存して発熱するため、水分と電解質に富む真皮・SMASが選択的に温まり、水分の少ない皮下脂肪はエネルギー変換率が極めて低い(約1/17)。さらに約45℃という低温は、コラーゲン三重らせんが収縮(recoil)を始め、熱ショック蛋白HSP-47が活性化してコラーゲン新生が起きる温度域でありながら、不可逆的な組織破壊は起こさない。=「効かせるが壊さない」設計。
方式:DLTD®(Dermis Layer Targeted Dielectric Heating)/周波数:40.68MHz(UHF/VHF帯)/電界配置:FocusPolar(収束型)
ターゲット:中真皮・線維中隔ネットワーク(FSN)・浅層SMAS/到達温度:約45℃(HIFUの60-70℃より低温)
脂肪吸収率:真皮の約1/17/痛み:VAS 0.4±0.6/10(麻酔不要)
臨床データ(Yi 2026・32例・単群・盲検写真評価+3D写真測量):ほうれい線WSRS 3.1→2.0(35.5%減)、マリオネットMerz 2.6→1.9(26.9%減)。即時改善はWSRS 9.7%どまりで、4週・8週と遅れて改善が進む=即時のコラーゲンrecoil+遅発性の真皮〜線維中隔リモデリング
安全性:軽微な紅斑10%・温感/チクチク20%(軽度一過性)、熱傷・水疱・浮腫・知覚異常・輪郭異常・脂肪萎縮はゼロ/禁忌:心疾患・ペースメーカー・妊娠
頻度:月1回×3回で6ヶ月〜1年の維持が中論/ダウンタイム:ほぼなし(数時間の軽い赤み・むくみ)
方式:モノポーラRF+HIFUのハイブリッド(オリジオXの上位機)
RF 3モード:Tモード=表皮〜真皮浅層0.5〜1mm(キメ・毛穴・トーン)/Gモード=真皮上層1〜2mm・ムービング照射(即効性のタイトニング)/Xモード=真皮深層〜皮下2〜4mm・スタンピング(深部の引き締め)
HIFU部(ハイジオ):SMAS 4.5mm・65〜70℃の熱凝固点
強み:表皮0.5mm〜筋膜4.5mmを1台で完結(施術40〜50分)/小型チップで目元・人中・口周り・鼻横など、HIFUでは神経損傷リスクで難しい部位もRFで対応可(熱が面状に広がるため神経を避けずに照射できる)
痛み対策:冷却システム従来比2.25倍+振動(ゲートコントロール理論)
限界:重度のたるみ・皮下脂肪が多い方には単独では効果が限定的(SMASの著しい下垂は熱収縮だけでは物理的な引き上げ力が不足)→糸・ウルセラ・手術の併用を検討
リスク:稀に火傷・水疱→炎症後色素沈着が数ヶ月続く可能性/禁忌:ペースメーカー等の金属(RFが干渉)
方式:Coolwaves®=2.45GHzのマイクロ波(水分子を振動させて発熱)。一般的なRFの「電気抵抗による発熱」とは別原理
エネルギー分布:皮膚表面にほぼ吸収されず、約80%が皮下脂肪層に到達=脂肪細胞を選択的に加熱・破壊
ハンドピース:Pocket(焦点深度3mm・顔専用)/Shallow(7mm・ボディ、脂肪が厚い顎下)/Deep(12mm・腹部/太もも等、顔には基本使わない)
効果:脂肪減少+セルライト改善+真皮のコラーゲン収縮によるタイトニング。約1ヶ月かけて脂肪が減少
臨床データ:Zappia 2025(あご下のたるみ10例・30日間隔2回)で12週後にSMSLGスコア3.6→2.3と有意改善・副作用なし。ただしn=10と小規模 B
頻度:顔は2週ごと3〜5回/1ヶ月で最大6部位まで(リンパ負担)/持続6ヶ月〜1年
★最重要の注意:こけている部位には照射しない(脂肪が減るため)。中顔面の高い位置(malar)に使うと若さのハイライトを削る=将来の頬こけを前借りする
リスク:熱傷・内出血・硬結・PIH・脂肪萎縮による凹み・神経障害・左右差/禁忌:妊娠授乳・ペースメーカー・治療部位の金属/シリコン・重度の心腎肝疾患・てんかん・自己免疫疾患・悪性腫瘍治療中/歴
方式:高密度焦点式超音波。SMAS層(4.5mm)に熱凝固点(TCP)を点状に作る/深度カートリッジで層を選択
強み:SMASを直接収縮させる唯一の非侵襲手段。深部の引き上げ力
限界(教科書):斜め上方に引っ張り上げるような効果までは望めないと事前に理解してもらうことが大切
★適応の分岐:教科書は「脂肪が多い方に良い適応。薄い頬の人はHIFU後のくぼんだ頬(sunken cheek)に不満を抱く」と明記。局所の陥凹=脂肪萎縮が起こりうる
エビデンス:MFU-Vとモノポーラ RFを比較した2019年ランダム化半顔盲検試験で、引き締め効果・満足度・有害事象に有意差なし A/教科書は「証明され普及したモダリティ」と評価するが第一選択(Gold Standard)とは書いていない
院内の順序:教科書(Q&A本Q20)は脂肪が多い=RF→HIFU→ヒアル/痩せ型=ヒアルが第一選択/中肉中背=HIFU→ヒアルと記載
共通:極細絶縁針を刺し、表皮を介さず狙った深さに直接RF。創傷治癒+熱変性の二重作用。日本ではいずれも未承認機器(説明時に触れる)
ポテンツァ:モノポーラ+バイポーラの4モード(1MHz/2MHz)。深度0.5〜2.5mm。ドラッグデリバリー(ポンピング作用)が最大の特徴=針を抜く際の空気圧で薬剤を真皮に押し込む
チップ:CP25(薬剤導入)/S16(16本・深め=肝斑・ニキビ跡)/S25(25本・浅め=毛穴・小じわ・赤ら顔)
エリシスセンス:深度0.5〜3.5mm。ダブルショット(1ショットで2深度にRF=時間短縮・痛み軽減)+真空サクション(吸引して密着=瞼の上・首など皮膚が寄る部位に対応)+金メッキ絶縁針(金属アレルギー配慮/ただし「必ず安全」ではなく既往は要申告)
チップ:1PIN(一点集中・深いニキビ跡/強い炎症ニキビ)/25PIN(万能・トーンアップ/毛穴/浅いニキビ跡)/49PIN(広範囲・たるみ引き締め/肌質)
使い分けの実務:広範囲のタイトニング・薬剤浸透重視→ポテンツァ/目元・首など難しい部位・金属アレルギー配慮→エリシスセンス/深いクレーターは両方可
★エビデンスの注意:査読文献の大半は「マイクロニードルRF(FMR)というカテゴリー」に対するもので、個別ブランドの優劣を示す高品質RCTは乏しい。カテゴリーとしてはニキビ跡への有効性と皮脂抑制(分割顔RCTで炎症性ニキビ約80%減)が報告されている B
★活動性ニキビへの注意:院内資料は「炎症が強く化膿しているニキビが広範囲なら、その部位を避けるか炎症が落ち着いてから」と明記(針刺激で悪化・色素沈着リスク)
| 患者像 | 第一に考える | 理由 | 組み合わせ |
|---|---|---|---|
| 痩せ型・頬こけ気味 | ヒアル(土台)+オールタイト | 教科書:脂肪少なめはヒアルが第一選択。HIFUは頬こけ悪化リスク | オールタイトで脂肪を減らさず引き締め |
| 標準体型・全体のたるみ | オリジオKiss or ウルトラセルZi | 表層の質感も欲しい→オリジオ/SMASを強く→HIFU | +ヒアルで土台(教科書はHIFU→ヒアルの順) |
| 脂肪多め・重い下顔面 | RF→HIFU→ヒアルの順(教科書)+オンダ | 脂肪の重みが主因なら先に脂肪へ介入 | オンダで脂肪を減らしてから引き締め |
| 毛穴・ニキビ跡・肌質 | ポテンツァ/エリシスセンス | 針RFは真皮のリモデリングが主目的=上記4機種とは目的が別 | +薬剤導入(ドラッグデリバリー) |
| 重度のたるみ・皮膚余剰 | 糸リフト/フェイスリフト手術 | 機器単独では不十分。教科書も「ボリューム回復+下垂組織の再配置+余剰組織の除去」の3つが要ると明記 | 機器は補助として併用 |